池波正太郎をめざして

読書の栞

日々の読書の記録、感想を書きます。

「高野聖」泉鏡花

高野聖とは高野山へと寄付を募り、各地をまわる僧侶のことである。いわずもがなであるが、高野山とは金剛峯寺という、真言宗の総本山がある。 とある高野聖から若い頃にあった不思議な体験談を聞く。 飛騨から信州に向かう道なり、ある茶屋のこと。近くで悪…

「新撰組局長首座 芹沢鴨」峰 隆一郎

峰隆一郎という名前を見て、すぐにピンとくれば良かった。 隆慶一郎という作家が好きだ。「一夢庵風流記(マンガ「花の慶次」の原作)」や「吉原御免状」、「影武者徳川家康」、「捨て童子・松平忠輝」を書いた。 名前が似ているので、影響を受けた作家なの…

「新九郎、奔る」ゆうきまさみ

正直を言うと、あまりおもしろくなかった。 主人公はのちに北条早雲と呼ばれることになる、伊勢新九郎である。 何がおもしろくないかというと、複雑な室町末期の状況をまんがによって説明していくのだが、これが複雑すぎる。平安末期と室町末期、江戸末期、…

「河童」芥川龍之介

都合により、「河童」を読んだ。 「僕」はある日、河童の世界に紛れ込む。 その世界は人間の世界とパラレルワールドになっている。哲学者、作曲家、硝子工場の工場主、宗教家、人間世界と同じような人間が多く生きている。自殺あり、戦争あり、と人間界と同…

「房総グランオテル」越谷オサム

千葉県外房の月ヶ浦にある房総グランオテルを舞台に起こる、ドタバタ劇。 一文で表現すればそういうことになる。 月ヶ浦は御宿だろう。 椰子の木やらの描写がそんな感じだ。 シーズンオフの房総グランオテルに三人の宿泊客がやってくる。 落ちぶれたミュージ…

「水木しげるの戦記選集」

コンビニで売っていておもわず買ってしまった。 戦記物というのは戦国時代の武将の伝記と同じで、勇ましく書いていく。 水木しげるの戦記もそうである。 主に海軍の戦記を扱っている。 そうなのだが、選集大激闘編の冒頭では、おそらく90年代半ば以降の水…

「闇の平蔵」逢坂剛

読んでいて自然と池波正太郎版「鬼平犯科帳」と比べてしまうのは人情だろう。 この作品における長谷川平蔵は決して人前で顔をさらさないという設定になっている。その平蔵が事件を解決することもあり、同心たちが解決することもあり、様々な展開をするのだが…

必修すぎる文学作品をだいたい10ページくらいの漫画で読む

こういう本を読むのは、邪道なのであるが、以前短編小説の集いでよく出品されていた方が、クトゥルフ神話大系をテーマに小説を書いていらした。そのクトゥルフ神話体系に関する知識がまるでなかったので、読む機会というのを探っていた。 コンビニでこの本の…

「高校生が感動した確率・統計の授業」山本俊郎

元々数学は苦手だった。赤点すれすれだったし。 そこからできるようにしていった。 ところが、確率・統計だけはどうしてもできなかった。 同じような思いでいる高校生や社会人は多いのではないだろうか。 特に統計の知識は社会人にとって必要な物である。身…

「わたしたちが孤児だったころ」カズオ・イシグロ

カズオ・イシグロは2017年にノーベル文学賞を受賞した作家だ。日本人としてはノーベル文学賞と聞けば、村上春樹が頭に浮かぶ。カズオ・イシグロは村上春樹の弟分を辞任していたと思う。 今回、初めて作品を読んだ。ウィキペディアで見てみると、非常に寡作な…

昭和天皇物語 第二巻

第1巻に引き続き第2巻も読んだ。 第一巻が幼少期から14歳まで、第二間が16歳か17歳までの話である。 東宮の学問所で引き続き、皇太子に対する教育が行われていく。読んでいと思うのだが、皇太子時代の昭和天皇が教育をけた時期が大正時代で良かったと思う。 …

昭和天皇物語 第1巻

作者は月下の棋士でお馴染み、能條純一。 物語は昭和天皇がマッカーサーに会いに行くところから始まる。 昭和天皇はマッカーサーに自らの命乞いをしなかった。その代わりに、民衆を委ねる。マッカーサーはその行為に感動する。 昭和天皇は聡明な方だと言われ…

池井戸潤「シャイロックの子供達」

シャイロックとはシェイクスピアの作品に出てくる金貸しである。実に強欲な人物である。いわゆる悪人である。 舞台は銀行である。 実名を伏せてあるが、東京三菱銀行なのだろう。その大田区の支店である。三菱は財閥の中でも組織優先で知られている。その空…

「空也」

空也という人について、あなたは説明できるだろうか。 私はこの本を読むまでは自信がなかった。 市の聖と呼ばれ、六波羅蜜寺にある口から梵字を吐いている像が有名だが、それくらいしか知識はない。 実は傍流ではあるが皇族の出であるという説がある。 とき…

「動的平衡」福岡伸一

人間の体は常に入れ替わっている、という話は聞いたことがあるだろう。細胞は常に更新し続けている。 著者はこの事実こそが生物を期待している特徴とする。 例えば我々人間は、過去の事実を記憶している。それは脳の中の海馬という部分で行なっている。その…

「深夜食堂」安倍夜郎

// 筆者の名前は「あべやろう」と読む。 この作品に登場する店は、深夜食堂といって、深夜から朝方まで営業しているめし屋だ。はっきりは書いていないが、新宿あたりをイメージしている。 登場人物のほとんどがダメな人々だ。一巻の一話目から、ヤクザとベテ…

北野武「アナログ」

// 純愛小説である。 主人公はインテリアデザイナーである。上司よりもデザイナーとしての腕は上である。 ある日自分の会社がデザインして、上司に手柄をとられた喫茶店で女性と出会う。女性はみゆきと名乗る。喫茶店では高校卒業以来のつきあいである悪友と…

司馬遼太郎のおすすめ作品。秋の夜長に読むなら、この読み方が良いです。【戦国編】

// 今週のお題「読書の秋」 司馬遼太郎、通史セット。 司馬遼太郎の作品は本人曰く「日本人がどうしてこんな戦争(第二次大戦)をしてしまったのか。それを考えて、あの当時の自分に書いて送った手紙だ」という趣旨のことを言っている。 本来は死ぬ前に「ノ…

吉川英治「松のや露八」

// 吉川英治の超長編はタイトルを見ると、だいたい時代設定や話の筋が分かる物が多い。ところが、「松のや露八」は一般的にはどの時代の話か、どんな展開なのかが分からない。 露八は明治以降に幇間になった後の名で、元々は土肥庄次郎といって、代々一橋家…

「投資バカ」&「元コンビニ店員だけど、FXで月給100万ちょいもらっている話」

// 小説を書くのに、参考にしようと思って、両書を読んだ。 投資をやる人間というのはどういう傾向を持つのか、ということを知るためだ。 その目的に合致しているのは、(意外だろうか)「FXで~」の方だった。その傾向は別の記事に書くとする。 この記事…

小説講座 売れる作家の前技術 デビューだけで満足してはいけない。

// この本は大沢在昌の小説講座である。 新人賞に応募経験のある、本気で作家になりたい人を集めて、一年間にわたって行った講座である。デビューだけでなく売れるにはどうしたらよいかについて、かなり具体的に語っている。 ところが、用語に関してちょっと…

池上彰「世界を動かす巨人たち<経済人編>」

// 世界を動かす巨人たち <経済人編> (集英社新書) 作者: 池上彰 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2017/07/14 メディア: 新書 この商品を含むブログを見る 夏休みももうすぐ終わり。 宿題に追われている子どももいることだろう。特に読書感想文はだるい。 …

高村薫「黄金を抱いて翔べ」

// 簡単に書いてしまえば、大阪を舞台にした犯罪小説である。 銀行にある金塊を強奪するという話だ。 とはいうものの、実際に強奪をするシーンはそれほど多く描かれておらず、どちらかといえば、計画に参加した人物たちの人生を描くことに注力している印象だ…

プレジデント二〇一七・五・二九号「孫子の兵法」

// 先ほど報道で、小池都知事が脱藩じゃなくて、自民党を離党した。 www.msn.com バックナンバーになって申し訳ない。 先日締め切りの短編小説の集いの作品を書いていてなかなか読めなかったプレジデント。普段買うわけではないが、「孫子」の文字を見て衝動…

又吉直樹「劇場」を読む。

// 又吉直樹の芥川賞受賞後、第一作目「劇場」を読み終えた。 ここから、感想を書くが「劇場」を読んでから、この話を読み進めたほうがよい。 この作品を端的に表現すれば、「ベタな内容な物語を作者の文章力で装飾した」作品だ。ただ世の中の小説を面白いも…

逆説の日本史22

// 井沢元彦が長年執筆を続けてきた、「逆説の日本史」が折り返し地点? にたどり着いた。 簡単にいえば、近世が終わり、いよいよ近代に突入する。その手前まで終わったということだ。具体的には西郷隆盛が反乱を起こす、「西南戦争」まで終了した。 終了記…

それでも、日本人は「戦争」を選んだ。

// 本書は横浜栄光学園での講義を元にして書かれた本である。 加藤陽子という人と人に対する批判 本書に対する批判 本書の特徴と言いたいこと 結論は言っていない どの時点で間違ったか 加藤陽子という人と人に対する批判 加藤陽子ご本人が第一回の講義で「…

「現代落語論」立川談志

// 先年、といってももう2011年だからずいぶんと前になるが、なくなった立川談志が書いた本である。帯には、「これが落語家がはじめて書いた本である」とぶってあった。そんなものか、まあ噺家なのだから当たり前か、と文言を見て思ったが、はたして本当かど…

「ビジネスエリートの新論語」司馬遼太郎

// この文章は、司馬遼太郎が産経新聞の記者だった当時に書かれたものだ。古今東西の警句を元に、新しい論語を作り出そうと試みている。 当時三十代であった司馬遼太郎の若々しい文章が読めるのも楽しいのだが、何冊かサラリーマン小説をもとにサラリーマン…

逆説の日本史&「家康研究の最前線」

// 安倍晋三首相は、自身が長州出身であることを誇っている。 それについて否定するつもりはない。 逆説の日本史という、井沢元彦がライフワークとして続けているシリーズがある。資料偏重主義の日本史の学者が見落としがちな、その当時の常識を駆使すること…