池波正太郎をめざして

読書の栞

日々の読書の記録、感想を書きます。

「深夜食堂」安倍夜郎

 

筆者の名前は「あべやろう」と読む。

 

この作品に登場する店は、深夜食堂といって、深夜から朝方まで営業しているめし屋だ。はっきりは書いていないが、新宿あたりをイメージしている。

登場人物のほとんどがダメな人々だ。一巻の一話目から、ヤクザとベテランオカマの交流だし。今回読んだのは、最新刊十九巻だ。

息子を郷里に置いていった伝説のストリッパー、灯台下暗しで遠距離恋愛する女、母子家庭で育ち娘のいる年上男と結婚したい女、元々口下手で子どもも多くて苦労した落語家とその憧れの女、癖のある母親を持ち結婚を諦めていたが最近妙にもてるアラフィフの女。

こう書くと、設定だけで読んでみたくなるでしょ。

 

常識外れの人がたくさん出てきて、みな常識外れの行動を取る。

不倫、浮気、詐欺、食い逃げ、傷害、婚活(これは常識外れじゃないが)。こんなの当たり前。

当たり前だからか、眉をひそめつつも、そんなことが起きても、誰もさわぎはしない。

 

とくに、他人の浮気だの、不倫、(あくまで他人のと限定する)だので気にくわないと思っている人は読んだらいいと思う。大騒ぎしないというのが正解の処し方なのだと分かると思う。

 

そして何かに傷ついている人も読んだらいい。救いのない話というのは滅多にない。

劇的な現実に疲れていて、劇的な展開を望まない人も読んだら良い。さつき書いた、ヤクザやストリッパーまで救われるのだから、きっと安心して読めるよ。

 

深夜食堂 19 (ビッグコミックススペシャル)

深夜食堂 19 (ビッグコミックススペシャル)

 

 

 

北野武「アナログ」

 

純愛小説である。

主人公はインテリアデザイナーである。上司よりもデザイナーとしての腕は上である。

ある日自分の会社がデザインして、上司に手柄をとられた喫茶店で女性と出会う。女性はみゆきと名乗る。喫茶店では高校卒業以来のつきあいである悪友と待ち合わせしていた。あまりにも魅力的なみゆきに後ろ髪を引かれながら、店をあとにする。

みゆきとは約束をする。

木曜日の夜に会おうと。

しかし、メールや携帯の番号など連絡先は交換しない。

気が向いたときにやってきて、相手がいればそのまま食事に行こうと約束する。

もしも相手が来なくても気にしない。何回かこなければ、相手はもう別の土地に移ったのだろう、と思うようにする。

仕事が多忙になったりして、みゆきになかなか会えない主人公。会えない時間が美由紀に対する気持ちを高めてゆく。

 

表現力に関しては、それほど高くない。

映画のように描写主体の小説を期待したのであるが、そうではなく説明主体でちょっとがっかりした。だが、逆に読みやすいのではないだろうか。又吉に触発されて書いたらしいが、文章力はさすがに又吉のほうが上である。

 

物語の構成に関しては、さすが北野武、と思わせる部分がある。

結末、主人公が取る選択は、読者によっては「バッドエンドではないか」とやきもきするものである。大落ちなので言えないが。ずっと、べたな展開が続いて、「こち亀かよ」と内心突っ込んだ。このまま終わるんじゃないか、と危惧していたが、さすがである。その選択は正しいのか? ともやもやした者が残る。ただ、定義的に言えば、そうでないと純愛にはならないのである。

読み終わった後、皮肉に笑う武の顔が浮かんだ。

めちゃくちゃ売れているらしく、なかなか手に入らなかった。

 

アナログ

アナログ

 

 

 

 

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