池波正太郎をめざして

読書の栞

日々の読書の記録、感想を書きます。

「鯨と生きる」西野嘉憲

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鯨と生きる

千葉県の安房の南端、和田町や館山ではいまだ捕鯨が続いている。

国際的に禁止されている鯨種ではない種類の鯨を追って取る。

その営みは、地域の文化にしっかり組み込まれている。

鯨が揚がるのをまっているおばあさん、その値踏みは厳しい。

小学生は鯨を解体する様子を見学する。

男は鯨を捕り、それを解体する。

解体された鯨をさらに細かくする。

男たちの額からは汗がほとばしり、女たちの笑顔には嘘がない。

おそらく太古から続いているだろう営みの美しさ、たくましさが映し出されている。

 

近代に欧米では鯨を取っていた。

鯨から油をとり、それを使って燃料にしたり、毛皮を洗ったりしていたらしい。

食用にはせず、取った鯨のほとんどは廃棄していた。

ペリーが黒船でやって来たのは、捕鯨のための補給港を日本に作りたかったからだ。

「そんなことをするのはさすがに止めよう」

欧米で捕鯨をやめる理屈はそれはそれで分かる。

オーストラリアでは観光資源として活用したいから鯨を捕るのに反対している。

和田町捕鯨も頭数は日本政府が管理している。その管理外で捕獲するのは禁止だ。

もちろん、今の日本で捕鯨を完全に自由にしてしまえば、乱獲に繋がる。

マグロを見ていれば分かる。

他の魚だっておそらく食べきれない量の捕獲をしているだろう。

それは技術が発達して、大量の捕獲が物理的に可能になったからだ。

近代以前なら、物理的にそれほど取れなかったろう。日本では。

 

ヴィム・ヴェンダースが、「iPhoneでは美しい写真は撮れない」的な発言をしたそうだが、ちょっと分かる気がする。この表紙だけ見ても、iPhoneではちょっと、無理かな、と思ってしまう。

是非見る機会があったら、手に取ってみて欲しい。

漁師たちの顔の変化など、実に迫力があった。

 

鯨と生きる

鯨と生きる