池波正太郎をめざして

読書の栞

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「房総グランオテル」越谷オサム

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千葉県外房の月ヶ浦にある房総グランオテルを舞台に起こる、ドタバタ劇。

一文で表現すればそういうことになる。

月ヶ浦は御宿だろう。

椰子の木やらの描写がそんな感じだ。

 

シーズンオフの房総グランオテルに三人の宿泊客がやってくる。

落ちぶれたミュージシャンの菅沼。

カメラマン志望の田中。

上司のパワハラに悩む佐藤。

それぞれが訳あってこのオテルに滞在する。

 

ちなみにオテルとはフランスの住居様式らしい。要するにホテルだ。

房総グランオテルは菅沼の代表曲だった。

 

彼らはそれぞれ問題を抱えやってくるのだが、それがなぜか次々と解決していく。これがどうしてなのかがよくわからなかった。

本の感想を書くときには主題をつかまなければいけないのだが、正直言って良く分からなかった。家族の問題なのか。若者の青春なのか。グランオテルの魅力なのか。月ヶ浦という土地なのか。その全部と言われればそうなのだが、焦点を絞りきれなかった。

だから、オレ流に分析してみる。

この作品の最大の魅力は、出てくる料理の美味しそうな描写だ。

いっそ、「孤独のグルメ」みたいにすればよかったのに、とすら思った。

筆者越谷オサムが御宿まで行って、実際に食事をして感動したに違いない。

中華料理も、ロコモコも、みんな美味しそうだ。

 

妙に房総グランオテルの看板娘である夏美がそれぞれの人間の問題を解決してまわってもリアリティがない。その点は良かった。それに従姉妹の絶世の美女子高生ハルカが馬鹿になっているのもよかった。

美男子もそうだが、美女もやはり努力が不要なので、馬鹿になってしまうという普遍の真理を描いている。

 

この作品の魅力は牧歌的で誰もが行きたくなる月ヶ浦の空気を描き出すということだろうか。

高校時代に、御宿よりも南に同級生が住んでいた。

その同級生は特急で登校するという猛者であった。

遊びに行ったことがあるが、ご家族もみんな人なつこく、こういう雰囲気がある。この作品のなかの家族の構成自体が女性が多いが、もともと上総、安房は女系が強い文化である。おそらく漁師が多く、農業や家のことを仕切るのが女性だからだろう。だから、作中の女性が強い空気がとても懐かしかった。

無理に主題を出すなら、そういう月ヶ浦の魅力なのではないだろうか。

 

房総グランオテル

房総グランオテル