池波正太郎をめざして

読書の栞

日々の読書の記録、感想を書きます。

「動的平衡」福岡伸一

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人間の体は常に入れ替わっている、という話は聞いたことがあるだろう。細胞は常に更新し続けている。

 

著者はこの事実こそが生物を期待している特徴とする。

 

例えば我々人間は、過去の事実を記憶している。それは脳の中の海馬という部分で行なっている。そのとき私たちはどうしても「記憶を司る物質」が常に脳に滞留していると想像する。が、実はそんな物質は存在しない。「記憶を司る物質」すら、常に入れ替わっている。これも動的平衡だ。動きながら、平衡を保っているのである。

 

本書の中で扱っている内容を簡単に書くと、

ダイエット、食物の消化、再生医学、免疫、遺伝子、と多岐にわたる。

 

福岡伸一は文章がうまい。ちょっと文学的なテイストのある文章を書く。

これは確実に文学をはじめとする文章を沢山読んできたからである。

その文章のうまさは入試の現代文で使われてしまうほどである。

きちんと書かなければならないのは、入試で使われる文章は基本的に「読みにくい文章」だ。それは使い慣れていない言葉が頻発する文章であるか、論理が読み取りにくい(飛躍、くどいなど)からである。福岡伸一の場合、受験生にとって言葉が慣れておらず、それに加えて福岡伸一独自の解釈が加わるから受験で使われる。文章自体が読みにくいわけではない。

 

さて、おもしろかったのは、再生医学のところのところと、ミトコンドリアの話だ。

IPS細胞やES細胞が発見された経緯を書くのと同時に、それを実用化するのがどれくらい困難かを書く。

いかに有用かは喧伝されまくっているのであるが、逆はなかなかお目にかかれない。

要するに、その発現から偶然性に大きく支配されているので、コントロールか困難なのだ。

 

ミトコンドリアは今現在、血中を運ばれる酸素を利用して、脂肪や糖を燃やすものだとされている。それはそのとおりなのだが、福岡伸一は、ミトコンドリアは太古の昔に人類のずっとずっと先祖が取り込んだ古代生物であり、その生物の特徴が脂肪や糖のエネルギーを使用できるというものだった。その特徴を取り込んだために生物は進化できた。

 

実は高校時代にはミトコンドリアは存在理由のわからないものと教わったように記憶している。だが、その当時学研のマイコーチという、通信教育の冊子があって、生物の冊子に、ミトコンドリア古代生物説というものがあって、それだけを鮮明に覚えていた。だが、マイコーチ以外とんと見ることがなかった。

だが福岡伸一が割と本気で信じていて、それがなにより嬉しかった。

 

新版 動的平衡: 生命はなぜそこに宿るのか (小学館新書)

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