「ゲゲゲの鬼太郎」に影響を受けた有名人。結構深いよ。
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個人的には「ゲゲゲの鬼太郎」は今回書く文庫版の一巻から五巻で一応の形が完成する。
「ゲゲゲの鬼太郎」の影響
ラジオを聞いていて、映画、アメリカ評論家の町山智浩が、「ゲゲゲの鬼太郎の影響を強く受けている」と発言していて、「へへぇ」と驚いた。鬼太郎は妖怪ものと侮るにはおしい魅力のある作品である。大人になるとそれはよくわかる。人間の負の部分もきちんと描いている作品だからだ。しかし、町山智浩が好きだとは思わなかった。
「ゲゲゲの鬼太郎」のお話の型
みなさんは「ゲゲゲの鬼太郎」のお話にどのようなイメージを持っているだろうか。鬼太郎と彼の妖怪仲間が、敵の妖怪を倒す、そういうイメージだろう。それで間違っていない。ただ、妖怪との抗争が人間のせいで発生するというニュアンスはなくなっていくのか。
この悪くなってしまった妖怪とは戦うというイメージは、水木しげる水木しげる自身の幼少期にあるのかもしれない。戦間期に多感な時期をおくった水木しげるたちこどもも、軍隊と同じくらい、好戦的であった。「のんのんばあとおれ」にそのことは詳しく書かれている。
鬼太郎は差別を受けやすい境界の人
ちょっと本格的なことを書くと、鬼太郎というのは「境界にいる存在」である。宮崎駿の作品ではよく使われるモチーフである。「風の谷のナウシカ」のナウシカ、「もののけ姫」のサンとアシタカなどがそうだ。
鬼太郎は人間と妖怪との混血で、どちらかというと、人間の仲間につくという存在は、得てして人間からはうまく利用され、妖怪からは疎まれる。もっとも差別に会いやすい位置にいる。
それによって、外国のドラキュラたちと大抗争にもなる。
鬼太郎の場合は少年誌ということもあり、両方から認められた存在である。結局双方にとって、役に立つ存在だから認められるのであるが。困ったことがあると、一反木綿や子泣きじじい、砂かけ婆、ねこ娘などの味方が頼る。ときに鬼太郎の方が助けられることもある。五巻くらいまでは、多々助けられる。
現実社会でも同じで、差別を受けるものは、差別をする人間にとって、役に立たないと存在を認められない。「ゲゲゲの鬼太郎」はそんなペーソスにあふれた作品だ。
ねずみ男の活躍
ところで、そんななか、五巻まではねずみ男の活躍がめざましい。
ねずみ男も鬼太郎と同じ、人間と妖怪のハーフだ。妖怪のエネルギーでもある妖気を吸い込む妖怪が出てきても、半分だけ吸われたりする。
そして鬼太郎が境界の人間として、双方の役に立つという行為で立地しているのに対し、ねずみ男は双方をうまく渡り歩くという行為で身を立てている。故水木しげるがもっとも好きなキャラクターに挙げるねずみ男。金儲けや自分の利益になりそうなときには、妖怪や人間をだまそうとするくせに、鬼太郎が出てきて形勢が逆転しそうになると、ちゃっかり鬼太郎側に与する。そういう巧みさがある。そして、結局発端がねずみ男なのに、殺されもせずに存在している。
ねずみ男はなにを象徴しているのか。
どうもねずみ男は大衆を象徴している気がしてならない。
はてなを見ていても思うが、大衆とは逃げ方がうまい。がっちり炎上させておいて、それが誤解だとわかると謝罪も何もせずに逃走。ただ、世の中勘違いでできている。おっちょこちょいでいいのだ。やられた方はたまらないけれども。
水木しげるは、独特な暗く、濃密な絵柄、人生観が入った物語、誰の作品でもそうだが、私小説のような側面を丹念に読み解いていくと、大人でも楽しめる作品になっている。機会があったら、一巻だけでも読んでみてほしい。
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