池波正太郎をめざして

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読書の栞

日々の読書の記録、感想を書きます。

箱根の坂 中巻

 

 一冊ずつ読んで感想を書いているので、三冊まとまっていないことは申し訳ない。

 

 さて、早雲は駿河の国の相続問題に絡んでいくことになる。妹の北川殿(千萱)の求めに応じたのだ。北川殿は後の今川氏親の後見役となる。成人までは、今川新五郎範満が執政を務め、成人の後氏親が相続することとなった。

 早雲は興国寺の廃城を居城として受け取る。この地は交通の要衝を押さえるのに都合の良い城だった。足柄道と箱根道の両方に睨みを効かせ、もしも今川範満の援軍として関東管領上杉軍がやってきた場合、痛撃を与えるのに適していた。

 

 今川の相続のとりあえずの決着は、おおむね早雲と太田道灌の二人で話し合われた。太田道灌江戸城を築城したことで有名な武将である。戦も上手い。それと同時に詩心もある。ただ、旧弊にとらわれていた。

 

 早雲は時代の趨勢を見越して、「国とは百姓(農民・国人など)のもので、守護はその利益を代表しているにすぎない」というビジョンを持っている。これに従って、百姓のためになる善政を敷いていく。またもともと「義」という革命思想を持っていて、天命が主から離れた場合、すげ替えてもかまわないという思想も持つ。

 太田道灌は、国人を率いて、足軽的な集団戦術を取るという画期的な戦い方などをするのであるが、その戦は誰のためにするかといえば、それは主君のためだと思っている。民衆の方を向いていないのである。

 

 この辺りから「司馬版早雲」と「富樫版早雲」の差が出てくる。

 それは京都の政権をどう見ているか、である。

 司馬遼太郎のなかの早雲は、応仁の乱後の室町幕府レームダック(死に体)だと思っていて、本家である伊勢家のことも京都の政権の情報を掴むことには使うが、それ以上に何かをしてもらうということには期待していない。

 富樫版では、積極的に政権の重要人物を利用する早雲像が出てくる。自らも京都へ行き、交渉に当たったりする。

 

 人物的には旧体制を切り捨てるような司馬版の早雲のほうがかっこいい。しかし、実際には使えるものは使うのだろうし、もしかするとこれくらいの関わりがあったのかなと思う。ただ、富樫版はサスペンス性を重視するのか、ちょっと早雲は追い込まれすぎであるきらいがある。

 一長一短であるが、どちらも面白い。

 

新装版 箱根の坂(中) (講談社文庫)

新装版 箱根の坂(中) (講談社文庫)

 

 

 

北条早雲 - 相模侵攻篇

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